なぞる期3
その翌日、朝から脳外科に行き、紹介状を貰い、大学病院に行った。
大学病院の脳外科の先生は、昨日の先生とおんなじことを云った。
・若い
・軽い頭痛(常にではない)以外の症状がない
『なら多分、良性の腫瘍です。でも、断言出来ないから検査入院してもらいます』 と。
その先生はかっちと同い年だった。
『この歳で癌って、ほぼないですから』
そう云われて、また安堵した。
いや寧ろ、(ですよねーーー!!)って感じだった。
かっちのお義父さん、お義母さん、私のお母さんも病院に駆けつけてくれて、心強かったのもある。
検査入院の日取りを決めて、病院を出て、みんなでお昼ごはんを食べた。
『この際だからちゃんと細かいとこまで検査してもらったほうがいいわよ』と、かっちのお義母さん。
その言葉に全員激しく頷いて、そこまで悲壮感の漂わない、ランチだった。
その後はかっちは仕事に。私はかっちの入院グッズを買いに行った。
私もかっちも病気というものに縁が全くなく、入院をしたことが今まで生きてきて1度もなかった。
だから、何が必要なのかいまいちわからなかった。
電車の中で検索。
【入院 必要 グッズ 便利】
プラコップとか、お箸セット、スリッパ、クリアファイルがあると便利なんだ~
一つ一つ手にして選んで、まるでミッションを遂行している気分だった。
かっちが少しでもリラックスして、検査入院を終えられますように。
腫瘍は脳幹から離れていたから手術出来るだろうし。
そんな気持ちだった。
4年前に私のお父さんは急性硬膜下血腫で倒れた。
緊急手術と、その後の手術を経て、奇跡的に後遺症などは一切残らず、1年しない間に社会復帰が出来た。
そんな手術成功・社会復帰率15%を潜ったお父さん。
この日、仕事から帰ってくるなり玄関でボロボロ泣き出したって話をお母さんから後日聞いた。
みんなかっちが大好きで、大切なんだ。
その、お父さんの時に少し勉強したから、多少脳の構造を判った気でいた。
どんなことになっても、私が笑ってるんだ。
そう決意したのはこの日。場所は家の近くの薬局。
歯ブラシセットを選びながら、そう意気込んでいた。