白魔道士になりたい

常にFLASHBACK

バレンタインをまるごと全部あげたい

東京では久しぶりに雪が降った。

雪が降ると本当に空気がしん として、吐く息が目立ってしようがない。

もれなく全部白い。

 

 

商店街のお菓子屋さんはバレンタインデーに向けて華やかになってた。

毎年、甘党のかっちにチョコをあげる日。

毎年、お世話になった友達や好きな仲間チョコとかお菓子を配る日。

今年はかっちコーナーに置く分だけにしようかな。と思う。

 

手作りか買うかは、毎年タイミング次第だった。

忙しい期だったら買う。

暇な時間が作れそうなら作る。

規則性なんかは特になく、毎年そんなふんわりしたバレンタインだった。

かっちは買おうが作ろうが喜んでくれてた。

そういう人なのだ。

 

 

 

 

 

かっちとの初バレンタインの思いでは(胃薬)だったなぁ と思い返していた。今。

 

私、かっちと一緒になる前まで家事がすこぶる苦手で。

料理なんてしたことなかったし、する気もなかった。

全力で外食産業廻してた。

(かっちに手料理を振舞いたい!美味しいって褒められたい!もっと好かれたい!)

というドーパミン全開思考で料理本片手に料理を学んだ。

 

最初は失敗の連続で、本当に散々だった。

エビチリを作れば炒めてたエビが消失するし、

錦糸卵の作り方がわからず、ただの細い卵焼きになったり、

塩少々の(少々)がわからず、ただの塩辛い野菜炒めになったり、

日曜お昼のやってTRYも青ざめる程センスがなかった。

 

でも、継続は力なり と云えば聞こえがいいが、ほんとそう。

(喜んでもらいたい)っていう素直な気持ちと、

(んでもっと好きになってもらいたい)っていう邪な下心を含んでいたから。

途中でやめるという選択肢は毛頭なかった。

下心パワーってすげぇなぁと今でも思う。

執念に近いよねある意味。

 

あと、かっちは褒める天才だと思う。

お味噌汁がしょっぱいと『疲れてるからちょうどいいわ~さんきゅーさん!』って褒める。

煮物が薄味過ぎると『今日昼が濃かったからこれくらいがちょうどいいの~』って褒める。

肉の味付けが濃いと『マヨネーズが超合うよ!ぐっじょぶぐっじょぶ!』って褒める。

バカが付くほど、甘やかされてた。

んで私もいい気持ちになり、会心のクリティカルヒットを出そう!と一生懸命になってた。

バカだったなぁ。

バカほど優しかったなぁ。あーね。

 

 

 

 

んで、迎えたバレンタインデー。

もう台所に立つのにも結構慣れた頃だった。

材料を買って、かわいいラッピングも買って、いざ。

チョコレートを目の前にした時に気付いた。

あ、ご飯とお菓子作りって、なんか違うぞこれ…と。

普通のご飯に計りなんてまぁ必要ない。

夜ご飯作るのに湯せんなんてまぁしない。

てかオーブンってどう使うんだっけ。

一気にパニックになった。

レシピを穴が開く程見ながらなんとか完成したチョコケーキ的なもの。

少し味見しても、美味しいのかどうなのか全くわからない。

不安で不安でしょうがなかったから、ラッピングの中に大田胃散を1包入れた。

 

そして夜、かっちに渡した。

かっちは『えっ!うそ~ありがとう!嬉しい!』と超大げさに喜んでくれた。

わかり易くそわそわしてたくせに。

私はかっちのそういうところがとても好きだ。

 

私が数時間前付けたリボンを、丁寧に解くかっち。

そしてチョコケーキ(的なもの)ドーン!

でもかっちは大田胃散の袋を見つけて大爆笑。

(ここにあるべきものじゃないものがある)ってことが妙にツボだったようで。

『俺こんなバレンタイン初めてだよ~www』って笑いまくるかっちを見て、つられて笑った。

 

 

チョコケーキ(的なもの)が本当に美味しかったのかどうかはわからない。

でも、褒めてもらって、もっと好きになってもらえた。

なにより、私のやることなすことで笑っていてくれるのが、幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

今こう、思いでをなぞってみて、作ろうかなって気持ちがむくりと顔を出してきた。

どうすっかなぁ。

直前まで、このどうしようは引き摺る。

どっちでもいいんだもんね。

かっちはどっちでも嬉しいはずだ。

 

 


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