白魔道士になりたい

常にFLASHBACK

指先の青

なぞる記8

 

3月24日にPET検査。

この頃になるとふらつきが激しくなってきたから、病院内ではもっぱら車椅子。

まさか私がかっちの車椅子を押す日がくるなんて思ってもみなかった。

そんな日がきたとしても、40年後とかの話だと思ってた。

29歳が39歳の乗る車椅子を押す光景。

周りの人からの目線がなんだかしんどかった。

被害妄想だって云っちゃえばそれまでだけど。

こっちの世界とは無縁だった我々。それは幸せなことだったけど、それ故になかなかきつかった。

 

 

 

翌日に入院。

手術を控えた入院。

2人で麻酔科の先生に話を聞きに行ったりした。

物理日記によるとこの日は私、病院から早く帰ったみたいだ。

(あんまり長いこといてもかっちに気を遣わせちゃうな)だって。

 

それから先、かっちは何度も入院をするんだけど、なんかのタイミングで聞いたことがあった。

ぼっち『私ずっと居て大丈夫?疲れない?』

かっち『なんで?ありがてえっすよ』

ぼっち『1人で居たいとかそういうのないの?』

かっち『ないなぁ~ぼっちがずっと居てくれれば楽しいからありがたいよ。でもぼっちが俺に気を遣って疲れちゃったらやだから、ぼっちに任せるよ』

 

この時も、時間が許す限り居ればよかった。

人生初めての検査じゃない入院。

手術。

不安だったよね。こわかったよね。やだったよね。

今記憶をなぞると、後悔ポイントや反省ポイントがてんこ盛りだね。

もちろんGJポイントや頑張ったで私ポイントもあるけど。

後悔しても、反省しても、何ににも生かせないのがなんとも。

なんともなのだ。

 

 

 

 

 

 

翌日朝9時。

かっちのお義父さん、お義母さん、お義姉さん、お義兄さん、私のお父さん、お母さん、私が病室に集まった。

みんなで手術室の前までついてった。

かっちは余裕ぶったポーズを崩さなかった。

みんなに心配かけることをなにより避ける。そんな男なのだ。かっちって奴は。

 

手術は長かった。

時間の感覚がわかんなくなるくらい、長かった。

わかりやすく落ち着きがなかったと思う。みんな。

手術自体は4時間で終わったらしいのに、麻酔がなかなか切れなかったらしく、実際かっちに会えたのは17時を周った頃だった。

お義父さんもお義母さんも私の背中を撫でながら『ぼっちちゃん!ぼっちちゃんが一番に入りな!』って云ってくれた。

私を先頭にして、カーテンを開けた。

かっちは私の名前をぼんやり、何度も呼んでた。

黄色 赤 青

カラフルな管がいっぱいかっちの体と機械とを繋いでいた。

手に付いてたのは確か青色。

青ごとぎゅっと握った。

がんばったね とか、おつかれさま とか、細かく覚えてないんだけど、多分そんなことを云いながら、手を握った。

 


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