白魔道士になりたい

常にFLASHBACK

いつでも半歩先を歩いてくれてた

なぞる記5

 

検査入院の翌日。

退院の日。

この日はちょうどホワイトデーだった。

 

朝、かっちの病室に入って、昨日の検査の話や、『夜の病院ちょーこえーwww』みたいなどーだっていいような話に花を咲かせていた。

そこに、脳外科の先生がやってきた。

私が、かっちが、何か云う前に先生は云った。

『それがあまりよくない話で…カンファレンス室で詳しくお話させて下さい。』

 

 

私とかっちは顔を見合わせた。

これはまずい。

確実になにかとてもまずいパターンなのだろうな。と、お互い無言で感じていた。

 

そこにかっちのお義父さんお義母さんと私のお母さんも合流。

みんなで話を聞くことになった。

 

 

 

 

 

先生は、『脳の腫瘍は原発ではなく、これは肺からの遠隔転移かもしれない。』

と説明を始めた。

 

視界が一気にぐらついた。

お義母さんは泣き出した。

誰でもいいから助けてほしい とバカで愚かなことをずっと思ってた。

真正面を向けずに、自分の手元を見て、どうする どうする という思いだけが頭の中を駆け巡る。

隣で、表向き冷静に説明を受けているかっちの顔をちらりと盗み見した。

盗み見して、その後、膝に置かれたかっちの手を握った。

私が泣くのはナシだ。

私がうろたえるのもナシだ。

なぜかこの時、はっきりとそう思った。

 

 

兎に角、今のまんまでは肺と脳の腫瘍の関係性がまたはっきり出来ない とのことだった。

呼吸器科の方で造影CTを撮って、生検で病理に出そう という話になって、この日は病院を出た。

 

 

 

 

私の家系に癌の人は居ない。

昔は結核が多かった と聞いているが、癌の親戚などは見事に一人も居なくて。

居ないから、知らないから、だから遠隔転移ということがどういうことなのか、ちゃんとわかってなかった。

 

この日から、恐かったけど検索魔になった。

恐くて調べることが出来なかった様々なことを調べて、理解することから始めた。

あの、カンファレンス室で盗み見したかっちの横顔。

ちゃんとした受け答え。

かっちは不安を感じてない風で、それがどうにも取り繕ったものには見えなかったのだ。

じゃあ私が必要以上に悲観しちゃいけない。

半歩後ろから支える奴がベソベソしたらかっちが不安に感じるかもしれない。

 

だからやっぱり、私が泣くのはナシで、私がうろたえるのもナシだったのだ。

 

ほんと、よくやったよ。

自分の根が生粋のお調子者でよかった。

今はそう思う。

 


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