家に一人で居ると声を出す機会がほとんどない。
かっちが隣に居た時でも20時台のどーだっていいようなバラエティ番組をにやにや見ながら『うそーんw』やら『まじかww』とかのひとりごとはしょっちゅうしていた と思う。
かっちは私がゲームをやっているのを隣で見ているのが好きなちょっとおかしな人だった。
なんでも彼の幼少期、ファミコンを持ってるご家庭はまだ少なく、一人がプレイしている姿を前のめりになって大勢で見ていたからその頃からの悲しき性なんだ って云ってた。ほんとかよ…
私が敵を倒しながら、謎を解きながら、悪戦苦闘しつつゲームを進めていく様を本当に楽しそうに見ていた。
『今の当たり判定おかしい…』とか、『あれ、セーブしてたっけ…』みたいなひとりごとというよりぼやきに近い言葉を一人溢しながら、それでも隣でにやにやしながら見ていた。たまにちゃちゃ入れつつ。
『ただいま。』という言葉を全く発せなくなったな と思った。
今までだってかっちが寝てから帰ることもあったし、かっちの帰宅前に帰ることだって多かった。
それでも『ただいま。』は毎日のもの。いつも声に出して云っていた。
今日、コンビニから帰ってきた時に小さめの声で云ってみた。
『ただいま。』って言葉を口に出してみた。
口に出してから気付いたんだけど、大事だったのって『ただいま。』じゃなくて『おかえり。』なのね。
『おかえり。』の流れから鞄置いて、部屋着に着替えつつ今日起こった面白かったことをすこしずつ話始めたりするあの感じ。
あーーおかえりもっかい聞きたいなぁ。だめかね。