何かを新しくして、変わりに古くなったものを捨て去る。
これが、出来ない。
服とかいくつあったっていい消耗品は躊躇いなく新しく買える。
元からあったものをなくさなければいいだけの話だから。
+10にでも+20にでもしていい。
でも、そうじゃないものも日常生活には沢山ある。
大型の電化製品なんかは(買い替え)が普通のことだし。
きっと今使ってるメインどころのものを変えることになるのは、まだずっと先のことなんだろうなぁ 程度にしか考えてない。
この前、ずっとこの家に住んでから変わってなかったものを変えなきゃいけない選択をした。
それは(鍵)だ。
ドアノブと鍵穴がおかしくなってしまい、かっちと私以外の人間は非常に開けにくく、そして締めにくい癖のあった玄関の扉。
時間が経つにつれ、開け閉めにやたら力を入れないといけなくなってしまった。
それも、もうコツどうのこうのレベルじゃなくて、締め出しがこわいかも…ってところまできてしまったのだ。
不動産屋さんに来てもらって、色々見てもらった。
経年劣化扱いで変えましょう と云われた。
全部おまかせして、鍵穴、ドアノブがあっという間に新しいものに変わった。
『前の鍵はもう要らないので、そちらで処分してもらって結構ですよ』 そう云って新しい鍵を3つ、私の手のひらに乗せて不動産屋さんは帰った。
こうやって変わっていくのかなぁ。
変わらないものなんてない。そう頭ではわかってたつもりだったんだけどなぁ。
鍵が変わっただけで、どうしてこんなにも。
こんなにもざらっとした気持ちになるんだろう。
この家からだって、私はきっといつか引っ越す。
でもその(いつか)は、まだ私が完全に捉えていない(いつか)の話なのだ。
キーチェーンから、前の鍵はまだ外せないまんまだ。
かっちのキーチェーンに、新しい鍵を付けた。
一見、それは私のものとおんなじものなんだけど、
まだ一度も鍵穴に挿し込んでいない、ぺかぺかの鍵。
誰の手元にいくことがない鍵だ。